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No.52, No.51, No.50, No.49, No.48, No.47, No.46[7件]
20230506
アパートの大家さんとソーンズの話
※ネームレス、ソーンズの名前も出てきません
こんこんと、ドアのノックの音が響いた。どちら様ですか、と声をかければ、聞き覚えのある声が帰ってきた。アパートの住居人の中で、1番の問題住居人。
彼が私のもとに来るのは、大体が何か物を壊したときだ。あとは備品を焦がしてしまったとか。
それは、彼が化学を専門にしていて、部屋で実験を行っていることに起因するのだが。なぜ部屋の中での実験を許しているのかと言われれば、実のところ、私もよくわかっていない。彼の入居を許可した先代管理人──私の父が、実験も含めてOKを出したのだ。彼曰く、部屋でやっていい実験は選んでいると。
「どうしたの?」
私はドアを開ける。彼の姿を見上げると、彼は神妙な顔つきをしていた。彼のこんな顔は初めて見た。いつも何を壊したって、こんな表情をしていたことはないのに。
「話がある」
そう切り出した彼の声色は、いつもより真剣みを帯びていた。そんな彼の様子を見ていれば、嫌でも内容を察してしまう。
「近いうちに、ここから退去したい」
「……引っ越す、ってこと?」
「ある意味ではそうかもしれないが」、彼はそう言いながら、首を横に振った。そして、はっきりと私に告げる。
「イベリアを出ようと思っているんだ」
わずかな希望さえも打ち砕かれる一方で、やっぱりそうだ、と心の底では思っていた。
わかっていた。今までだってそうだった。ここを出て行く人で、イベリア内を行き来する人なんてほとんどいなかった。みんな、イベリアを出る決意を固めていた。
エーギル人にとって、イベリアの状況は日に日に悪くなっている。いつ裁判所の人間が来て、連れていかれるかもわからない。イベリアにいる限り、エーギル人に安寧などないと言われているようだ。
イベリアを出たほうが安全だという彼の選択は、何も間違っていない。
そんなこと、わかっているのに。
「そっか。それは寂しくなるね」
私は笑って彼に返事をした。
私にできることは、その選択を受け入れて、送り出すことだけだ。
「今まで世話になった」
「本当だよ。色々大変だったんだから」
今まで散々、彼の実験の失敗を見てきた。物を壊してしまったり、部屋を少しばかり焦がしたり。そんな人は彼だけだった。
そのせいで、彼と顔を合わせる機会も、話す機会も、他の住居人よりずっと多くて。
部屋の修繕が大変だったといえばそうなのだけれど、彼に実験の様子を聞くのも、見るのも私は好きだった。
それはきっと、私では一生経験することのない出来事だったから。何もかもが新鮮で、楽しかったのかもしれない。
「今までありがとう」
私の言葉に、彼は少し驚いた様子を見せた。なぜ自分がそんなことを言われるのか、と言わんばかりだ。
「お礼を言うのは俺の方だろう。本当に世話になった。ありがとう」
彼は穏やかに微笑んでいた。この表情も、もう見られないのだと思うと、少し胸が苦しくなった。
*
私は扉の前に立っていた。かつて、彼の部屋だった場所だ。
扉を開ける。
机にも床にも積まれていた資料の束も、実験器具も。壁に貼られていたメモも、飾られていた紋章も、何一つなくなっている。
窓を開ける。
一際大きな風が部屋に入り込む。
吹き抜ける風と一緒に、彼がいつも持ち歩いていた薬品のにおいと、煤のにおいがした。まだ微かに、この部屋には彼の痕跡が残っているのだ。
「……ちゃんと掃除しなきゃ」
早く、彼のことを思い出にできるように。
20230506
#ネームレス #ソーンズ #夢主
#2023
※ネームレス、ソーンズの名前も出てきません
こんこんと、ドアのノックの音が響いた。どちら様ですか、と声をかければ、聞き覚えのある声が帰ってきた。アパートの住居人の中で、1番の問題住居人。
彼が私のもとに来るのは、大体が何か物を壊したときだ。あとは備品を焦がしてしまったとか。
それは、彼が化学を専門にしていて、部屋で実験を行っていることに起因するのだが。なぜ部屋の中での実験を許しているのかと言われれば、実のところ、私もよくわかっていない。彼の入居を許可した先代管理人──私の父が、実験も含めてOKを出したのだ。彼曰く、部屋でやっていい実験は選んでいると。
「どうしたの?」
私はドアを開ける。彼の姿を見上げると、彼は神妙な顔つきをしていた。彼のこんな顔は初めて見た。いつも何を壊したって、こんな表情をしていたことはないのに。
「話がある」
そう切り出した彼の声色は、いつもより真剣みを帯びていた。そんな彼の様子を見ていれば、嫌でも内容を察してしまう。
「近いうちに、ここから退去したい」
「……引っ越す、ってこと?」
「ある意味ではそうかもしれないが」、彼はそう言いながら、首を横に振った。そして、はっきりと私に告げる。
「イベリアを出ようと思っているんだ」
わずかな希望さえも打ち砕かれる一方で、やっぱりそうだ、と心の底では思っていた。
わかっていた。今までだってそうだった。ここを出て行く人で、イベリア内を行き来する人なんてほとんどいなかった。みんな、イベリアを出る決意を固めていた。
エーギル人にとって、イベリアの状況は日に日に悪くなっている。いつ裁判所の人間が来て、連れていかれるかもわからない。イベリアにいる限り、エーギル人に安寧などないと言われているようだ。
イベリアを出たほうが安全だという彼の選択は、何も間違っていない。
そんなこと、わかっているのに。
「そっか。それは寂しくなるね」
私は笑って彼に返事をした。
私にできることは、その選択を受け入れて、送り出すことだけだ。
「今まで世話になった」
「本当だよ。色々大変だったんだから」
今まで散々、彼の実験の失敗を見てきた。物を壊してしまったり、部屋を少しばかり焦がしたり。そんな人は彼だけだった。
そのせいで、彼と顔を合わせる機会も、話す機会も、他の住居人よりずっと多くて。
部屋の修繕が大変だったといえばそうなのだけれど、彼に実験の様子を聞くのも、見るのも私は好きだった。
それはきっと、私では一生経験することのない出来事だったから。何もかもが新鮮で、楽しかったのかもしれない。
「今までありがとう」
私の言葉に、彼は少し驚いた様子を見せた。なぜ自分がそんなことを言われるのか、と言わんばかりだ。
「お礼を言うのは俺の方だろう。本当に世話になった。ありがとう」
彼は穏やかに微笑んでいた。この表情も、もう見られないのだと思うと、少し胸が苦しくなった。
*
私は扉の前に立っていた。かつて、彼の部屋だった場所だ。
扉を開ける。
机にも床にも積まれていた資料の束も、実験器具も。壁に貼られていたメモも、飾られていた紋章も、何一つなくなっている。
窓を開ける。
一際大きな風が部屋に入り込む。
吹き抜ける風と一緒に、彼がいつも持ち歩いていた薬品のにおいと、煤のにおいがした。まだ微かに、この部屋には彼の痕跡が残っているのだ。
「……ちゃんと掃除しなきゃ」
早く、彼のことを思い出にできるように。
20230506
#ネームレス #ソーンズ #夢主
#2023
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do / sikaku / なんかいい感じの漫画ビューア / alevirita / 何らかの配布場
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まとま( memo / 更新連絡X )明日方舟CNプレイヤー。グロ版は半ば引退気…
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まとま( memo / 更新連絡X )
明日方舟CNプレイヤー。グロ版は半ば引退気味。
Hypergryphのことが好き。
ご連絡は更新連絡XにDMいただくか、contact*wandertmt.me(*→@)までメールをお願いいたします。
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当サイトではバナーを除く全ての画像・文章の転載及び二次創作(三次創作)を禁止しています。
当サイトはソーンズ/引星ソーンズ(明日方舟)のみ取り扱っております。状況によって他のキャラが登場することがありますが、夢対象ではありません。
なお、管理人が大陸版プレイヤーであるため、大陸版のネタバレは一切配慮しておりません。
大陸版の内容については、管理人がプレイした際に読み取った情報を元に創作しているため、誤訳や誤った解釈が含まれることがあります。
以上のことをご了承の上、閲覧ください。
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名前変換
※ソーンズと同棲している前提です。海を知らない女の子とソーンズの話。
鉛色の空。岩ばかりが目立つ海岸。湿ってねっとりとした海風が、私の頬を撫でる。心地良くはないその感触に、私は思わず眉を顰めた。
私はどうして、こんなところにいるんだろう?
眼前の光景は、見たことがない場所だ。
私は海を見たことがある。行ったことがある。でも、記憶の中の風景と、目の前の風景は一致していない。
何もわからないまま、ごつごつとした岩を渡っていく。
しばらく進んでいくと、見慣れた人物の背中を見つけた。
「ソーンズ」
名前を呼んだが、彼は私に気づいていないようだ。今すぐに駆け寄りたかったが、足場の悪さがそれを許さない。一歩ずつ、彼に近づいていく。
彼のところまであと少し。そう思ったときだった。
海岸線を眺めていた彼が、一歩足を踏み出した。──波の向こう側に向かって。
驚いてる暇はなかった。一歩踏み出したあと、彼は躊躇いもなく海へと歩みを進めていた。
誰よりも愛しい人が、海に入っていく。
私は必死に「行かないで」と叫んだけれども、彼にはちっとも聞こえていないようで、こちらには見向きもしない。彼が少しずつ海に身体を沈めていくのを、ただ見ていることしかできない。
「ソーンズ、やだ、行かないで!」
やっとのことで彼の元に辿り着く。それでも彼は私に気づいていない。私を無視しているのだろうか。それならば、と手を伸ばす。
そうしてようやく私は気づいた。
私の手が、透けていることに。
伸ばした手は、彼に触れることなく、すり抜けていった。
*
私は目を覚ました。勢いよく起き上がる。バクバクと、大きく速く脈打つ心臓が、先ほどの悪夢を物語っていた。
私は隣で眠るソーンズの姿を確認した。彼が隣にいることに安堵する。それから、恐る恐る彼の身体に手を伸ばす。きちんと触れられた。彼の身体の温かさと、感触を確かに感じる。
私は大きく息を吐き出した。
安堵した身体から力が抜ける。
「{NAME0}」
不意に名前を呼ばれて、思わず飛び上がりそうになった。
「ごめん、起こしちゃった」
「気にしなくていい。それよりも」
ソーンズが起き上がって、私に向き直る。それから、私の手をきゅっと、包むように握った。彼の手の温もりが、いつもより温かく感じる。
「手先が冷え切っている。さっきの行動といい、何かあったか?」
「……ちょっと変な夢を見ただけだよ。大丈夫」
「本当か? 手が震えているぞ」
「え、うそ」
ソーンズに言われて、慌てて私は自分の手を見やった。ソーンズの大きなにそっと包まれて、安心感を得られてはいるものの、ソーンズの言うとおり、私の手はわずかに震えを見せていた。
「よければ、話を聞くが」
「でも、夜中だよ。明日に響くし、寝た方が」
「この状態でまた眠れるのか? 俺のことは気にしなくていい」
「……じゃあ、聞いてくれる?」
「ああ」
半ばソーンズに押される形で、私は頷いた。
自分が見た夢の内容をソーンズに伝える。
ソーンズが海に入ってしまう様子を。それを止められなかった私のことを。
「どうしてこんな夢を見たのかも、海にいたのかもわからない。見た場所も、私の知ってる極東の海じゃなかった。行ったこともない場所なのに、どうして夢に見るんだろう」
ソーンズは、黙って私を見つめている。少しだけ、私の手を握る力が、強まった気がした。
「……それとね。ソーンズは、迷ってなかった。それが正しいと思って、進んでいっているように見えて……だから、すごく嫌だった」
夢の中で私は実体がなかったから当然ではあるが、ソーンズは陸を振り向きもせずに海に向かっていった。一切の迷いもなく。
「ソーンズは、そんなことしないよね?」
私は真っ直ぐにソーンズを見つめた。
「私とずっと一緒に、いてくれるよね?」
私が見たものは夢に過ぎない。本当にソーンズがそんなことをするなんて思っていない。それなのに、私はソーンズにこんなことを尋ねてしまっていた。
……違う。私は心のどこかで、ソーンズならそうするかもしれないと、思ってしまっているのだ。だから、ソーンズに、否定をしてほしかった。「俺はそんなことはしない」「{NAME0}と一緒にいる」と、そう答えてほしかった。
「……{NAME0}」
ソーンズは、それ以上は何も言わなかった。ただ、私を引き寄せて、手を頬に伸ばして、それから、キスをしてくれた。触れるだけのキス。何度も、角度を変えて。お互いの存在を確かめるように。
……それが、彼の答えなんだろう。
「ソーンズ」
私が話そうとする前に、ソーンズは指で私の唇に触れた。
「……寝よう。{NAME0}が眠りにつけるまで、抱きしめていてやるから」
ソーンズの大きな手が、私の頭を撫でた。
*
{NAME0}は再び眠りについたようだった。安らかな寝顔が、今度は悪夢ではなく、穏やかな眠りにつけたことを示している。
ソーンズは{NAME0}の頬を撫でた。起こさないようにそっと、優しげな手つきをしている一方で、ソーンズの表情は重く険しいものだった。
ソーンズは、{NAME0}が見た夢の話を、否定できなかった。
{NAME0}が何を求めていたのかは理解していた。その上で、ソーンズは{NAME0}が望む言葉を与えることはできなかった。
{NAME0}は海の脅威を、実際に見たことはない。それどころか、海の脅威の存在すら知らなかったはずだ。だからこそ、海に入っていくことを、恐怖よりも不思議と捉えたのだろう。
だが、ソーンズは違う。{NAME0}の話が意味するものを、理解できる。それが、現実に起こりうることをわかっている。
もし、アレが自分たちを追ってきたとして。自分は、今のままで、アレを殺すことができるのだろうか? アレを殺すのに、もっと別の方法を取らなければならないとしたら?
最悪の可能性はいつだって付き纏っている。
『絶対に』など、ソーンズは約束できない。
「……お前は、そうならないように生きてくれ」
もし、そんな未来があったとしても。
せめて、{NAME0}は、そのままの姿で生きてほしい。
{NAME0}の額に軽くキスを落とし、ソーンズも瞼を閉じた。
20230615
#ソーンズ #固定夢主
#2023